時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」 (ブルーバックス)

読了したが、おそらく3分の1も理解できていない。これまで、相対性理論や量子力学の世界を何とかイメージ的に掴みたいと思って、何10冊もの本を読んできた。数式が苦手なぼくとしては、あくまでも数式に頼らず、言葉でイメージできるようになりたい、ということが目標である。そうして、やっとおぼろげながらイメージのようなものができ上げっていた。が、本書はそうしたイメージもかなりの部分をぶち壊してくれたのである。以下、本書の主張を箇条書きにしてみる。（理解できたことの箇条書きではない）・空間があってそこに時間が流れているのではなく、不可分な「時空」という「場」が存在している。・空間が広がっているように時間も広がっており、「今」だけが存在しているのではなく「過去」「未来」に広がっていると捉える。つまり、人間の形をした金太郎あめが過去から未来に長く伸びている状態に近い。・こう考えると、時間に方向性がなくてもよいことになるが、この我々の宇宙に時間が方向性を持つのはビッグバンという「始まり」があったからであり、この始まりから遠ざかるという方向性を持っている。・こうしたことを理解するにはアインシュタインの数学の先生でもあったミンコフスキーの幾何学が重要となる。ミンコフスキー幾何学によれば、①時間は「現在」が時々刻々と更新されていくでのはなく、空間と同じような広がりである。②時空の座標を回転させると、時間と空間が交じり合う。③時空はユークリッド幾何学ではなくミンコフスキー規格がに従う。④座標を回転しても時間・空間の幾何学的構造は変わらない。⑤時空における回転の場合、時間と空間が界面を超えて交じり合うことはない。⑥したがって物体を加速しても空間と時間の界面にあたる二等分線を超えて加速できない。⑦界面に沿って進むものは自然界の最高速度に達する（光速）に達する。それ（界面）は回転させた座標軸のいずれに身を置いていたとしても、時間軸と空間軸の二等分線になるので、界面に沿って進む場合の速度は、どの座標系でも等しくなる。つまり、どの座標系から見ても光速は等しいことになる。⑧つまり、高速が等しいというのは何かそうさせる原理が働いているのではなく、界面に沿って進めばそうならざるを得ないだけである。・時間の向きに関して、エントロピーとの関連で言えば、ビッグバンの最初の状態はものすごく整然とした高エネルギーが一様な状態（低エントロピー）であった。だからこそ、ほとんど何もない宇宙空間に星や星団が生まれるという（高エントロピー状態）に変化してきている。時間の向きはエントロピーの法則とは矛盾しない。・時間は流れているのではなく、それを流れているように感じるのは脳が捏造しているのである。（この議論は、25年ほど前に読んだ哲学者・大森壮蔵『時は流れず』に近いとも思えるが、大半は忘れてしまっているので再読してみる）・量子力学での不確定性原理は、人間による観察によって「重なりの状態」が1つに収れんする、と教科書で説明されている。が、この人間の観察問題を持ち出さなくても、収れんを説明できる可能性がある。それが「干渉」と「脱干渉」である。というようなことなのだが、書きながらやっぱり3分の1も理解できていないと痛感する。特に、ミンコフスキー幾何学や脱干渉のところなどはそうである。因みに本書には、数式は使われていない。その代わりに図が豊富に使用されており、素人にも分かりやすいようにと随分工夫されている。説明における卑近な例の持ち出し方も、それを狙っていることがよくわかる。が、この著者には、素人にとって何が分かりにくいかがやはりよく分かっていないとも感じる。まあ、物理学という抽象的なことを扱うのであるから、分かりにくいのは宿命でもあるのだが。もう1度、いや2度か3度、読み返してみる必要がありそうだ。画像に含まれている可能性があるもの:テキスト