スティーヴン・ホーキング―天才科学者の光と影 (ハヤカワ文庫NF)

ホーキングの半生に興味を抱いた人が、同時に宇宙論について学べるように配慮したのが本書です。科学者などの伝記を読む場合、専門分野があっさりとしか書かれていないために理解が中途半端となり、欲求不満を感じることがありますが、本書ではそのようなことはありません。マイケル・ホワイト（ドーヴァーブロックカレッジの科学研究部門の長でBBCの科学番組コンサンタルトもつとめる）とジョン・グリビン（天体物理学の博士号をもつ科学ライター）の共著が学習面も配慮した本書を実現させました。本書ではホーキングの1942年の誕生から1991年までの50年の半生が大学生活、ALSの発症などの様々な生活の変化を通して語られていきます。そしてそれに並行して古典的宇宙論、ブラックホール、ビッグバンなどが解説されます。この解説があることでホーキングの人生の中心である研究の輪郭が立ってくる感じがします。ホーキングの学生生活を通して解説されるイギリスの学校システム、科学者（ホーキング）の宗教観などは興味深く読める部分ですが、仮に宇宙論の解説がなく、ホーキングの半生だけが書かれていたとしたら、本書の魅力は半減していたと思います。本書は1992年に発行のハードカバーの本の文庫版です。