いきものをとむらう歴史 -供養・慰霊の動物塚を巡る-

しみじみと、深く感動した。動物の本だから、動物に関わる仕事をしている人が書いた本だと思ったが、違った。著者は京都大学工学博士、一生を工学部関係で働いてきた方だ。この先生が高齢になってから18年もの間、日本全国の動物塚を調べてきた、そのことが書いてある。動物実験を行っている日本の大学や研究機関はなぜ、欧米にはない実験動物慰霊碑を建立するのだろうか、という疑問から始まったという。そして今、100種以上の動物、500基を超える動物塚を調査したそうだが、まだ無数と言ってよいほどの動物塚が残されているそうだ。お墓を作ってもらっている生き物は、飼育動物、実験動物の他に、野生動物もたくさんいる。サル、クマ、シカ、イノシシをはじめ、鳥たち、虫たち、そのほか海ガメ、ナマズ、カニ、ヘビ、うなぎ。イワナ、シジミ、クジラにイルカ。ニシンやサンマも。それだけではないのだ、開発、災害、戦争などの犠牲になった生き物たちも！読むうちに、昔から続いてきた生き物に対する日本の人々の優しい心根が迫ってきて、とくに悲しい場面があるわけではないのに、涙が止まらなくなった。有名な犬、ハチ公のエピソードも出ている。馬たちはハイセイコーなど有名な名馬が多くのエピソードを残しているが、無名の馬が、ロザリオを持つ馬頭観音石坐像として供養されている。なぜロザリオ？この馬の一生は？しかし最近になって、こんな日本人の、生き物へのまなざしが変化してきていると、著者は指摘している。生き物以外の供養塔が出てきたことも、その一つで、人形塚、ハサミ塚などあるそうだ。この部分は、人のお墓の問題などを含めて、読みながら考えてゆく部分だろう。