ますます眠れなくなる宇宙のはなし〜「地球外生命」は存在するのか

2011年の本。著者は東京大学名誉教授（宇宙論）。曰く・・・カントは宇宙人と通信するには宇宙の普遍的真理である数学を使うべきだと主張した。このアイディアを受けて、ガウスはシベリアの大地にピタゴラスの定理の説明図を描いて宇宙人へのメッセージにしようと提案した。彼らはみなまじめに宇宙人との接触を考えていた。現在の火星に磁場はないが、かつては強力な磁場があったらしい。磁場は惑星の盾となり、太陽からの高エネルギー荷電粒子（太陽風）から生命を守る。火星は地球よりも軽く、太陽からも遠いので地球よりも早く冷却が進んだはず。火星が冷却すると液体の外核が冷えて硬くなり、流動できなくなり、磁場が失われ、太陽風が火星に降り注ぎ、火星の大気は剥ぎ取られた。生命がいたとしてもこのころに多くが絶滅したかもしれない。大気が失われ、気圧が低下すると、海が蒸発し、火星は乾燥し、大気と海による保温効果を失うことで一気に寒冷化する。有人火星探査にかかる費用は２００億ドル（１．６兆円）という試算もある。地球が太陽に近すぎると海が蒸発してしまう。遠ければ海が凍り付いてしまう。恒星のまわりで水が液体で存在できる範囲のことをハビタブルゾーンという。惑星のサイズも重要。サイズが小さいと大気が希薄となり、水は蒸発しやすくなる。惑星が液体の水をもてるかどうかは「太陽からの距離」と「惑星のサイズ」が大きく影響する。木星や土星の衛星は、ハビタブルゾーンよりずっと外側に位置しているのに液体の水をもっているらしい。これは木星や土星がおよぼす巨大な潮汐力が衛星を揺り動かし、そのエネルギーによって氷が溶けて液体になっているのだと考えられている。生命の誕生は比較的短期間で可能なのかもしれない。しかし、生命が進化を遂げ、高等生物になるまでには長い年月が必要。惑星はそれだけの期間、継続的にハビタブルゾーン内に存在し続けなければならない。原始地球には火星ほどの大きさの超巨大な原始惑星が衝突したらしい（ジャイアント・インパクト）。その衝撃によって月ができた。このとき大小２つの月ができて、その後、一つになったという説もある。ジャイアント・インパクトからしばらくたったころ、小天体の落下が再び激しくなる（後期重爆撃期）。このときの小天体に「生命の種」が含まれていた可能性がある。また、小天体には氷が多く含まれていて、この氷が雨となり、海ができたと考えられている。地球を形づくった微惑星はもともと氷を含んでいなかった。降り注いだ小天体は太陽から遠い場所でできた微惑星がもとになっているので氷を多く含んでいた。惑星の自転周期は、惑星が誕生するときの偶然の要素によって決まると考えられている。地軸の傾きも同じく、惑星形成時の偶然の要素で決まるとされる。地軸は歳差運動の影響と他の惑星の重力によって変動する。地球の場合、月が巨大な潮汐力を地球に及ぼすことで地軸の傾きを安定化させていると考えられている。地球の生命は、地球外で合成された生命の材料が地球に運ばれてきて、それを使ってつくられたものである、という考えを総称して「パンスペルミア説」という。アミノ酸には左手型と右手型の２種類がある。鏡像関係にある。基本的な性質はほぼ同じ。しかし、旨味成分として知られるグルタミン酸はアミノ酸の一種だが、私たちは左手型のグルタミン酸だけに旨味を感じる。私たちの体をつくるタンパク質が左手型のアミノ酸だけからできていることに関係しているといわれる。地球上の生命はみな、なぜか左手型のアミノ酸だけを利用している。地球以外の星に酸素はほとんど存在しない。酸素は光合成という生物の活動によってつくられる生物由来の物質。人類は単なる遺伝子操作を超えて、自らの設計によって進化するだろう（ホーキング）。みたいな話。