樂と萩

それぞれの焼物界、〈樂焼〉と〈萩焼〉を代表する陶工お二人がステージを取っ替えっこして作陶に挑む！樂家当代の樂吉左衛門さん（十五代目）ならではのユニークな企画の足跡を、多数の作品写真群と共につづった一冊です。かつて、琵琶湖畔の佐川美術館内・樂吉左衛門館で開催された同名展示会の図録的な要素も含みますが、作品の掲載点数の豊富さという点でもこんな贅沢な作品集はなかなか無いのではないでしょうか。お相手の萩焼・坂倉新兵衛氏とは旧知の仲。青春時代を共に過ごし、互いに、歴史と伝統を支える運命を生き、そして今、次世代の後継者へバトンをつなごうとするお二人。その人生ドラマを踏まえての作陶交換風景がこの企画の大きな見所です。そしてやはりもう一つの見所が、〈手づくね作法〉が規範の樂焼の名手・吉左衛門さんが“ ロクロを駆使 ” して生み出す萩焼茶碗の数々。継承者としてのタガを自ら外し、自由闊達に作陶されている気分が溢れて出ていてとても素敵な作品が目白押しです。過去の書籍刊行物だけみていると、いつも哲学的で深淵な空気を放つ樂さんですが、本企画の、一碗ごとに付された樂さんのコメントも素のままでとっても楽しそう。樂吉左衛門さんのファンにとってこれは実に貴重な宝の一冊です。（佐川美術館で展示されなかった作品も多数掲載されていますから、同展を観覧された方も必携だと思います！）